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飯塚簡易裁判所 昭和38年(ハ)214号 判決 1964年3月30日

原告 山本護

被告 籾井芳郎

主文

被告は原告に対し、金一〇万円およびこれに対する昭和三八年五月一日以降支払済に至る迄年六分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

≪省略≫

理由

被告が金額一〇万円、支払地、振出地ともに山田市、支払場所正金相互銀行山田支店、受取人江田一との記載がある約束手形一通を振出したことは当事者間に争いがなく、≪証拠省略≫を綜合すれば、前記手形の満期は昭和三八年四月三〇日であること、訴外江田一が右手形を訴外中村寅三郎に裏書譲渡し、右中村において満期にこれを支払場所に呈示したこと、中村が昭和三八年五月一七日原告に対し右手形を交付しその権利を譲渡したこと、原告が現に右手形を所持していることが認められ、右認定に反する証拠はない。しかして、右中村が同日被告に債権譲渡の通知をなし、該通知はその頃被告に到達したことは当事者間に争いがない。

なお、被告の抗弁事実については、これを認めるに足る証拠がないから、右抗弁は理由がない。

ところで、前記手形に振出日の表示のあることは原告の主張しないところであり、甲第一号証によれば、右手形は振出日の表示を欠いた手形であることが認められる。しかしながら、日付後定期払、一覧払、一覧後定期払手形と異なり確定日払手形にあつては振出日は手形上の権利の内容又は義務者を確定するためには全く必要のない事項であるから、その記載を欠いたとの一事をもつて該手形を無効ならしめると解することは手形の要式性を不必要に強調しすぎるものとの非難を免れない。それ故、本件のような確定日払の約束手形にあつては振出日の記載は必要的記載事項ではなく、これを欠くも手形を無効ならしめるものではないと解すべきである。

よつて、被告は原告に対し手形金一〇万円およびこれに対する満期の後である昭和三八年五月一日以降右支払済迄手形法所定の年六分の割合による利息の支払義務ありというべく、原告の本訴請求は正当としてこれを認容することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 片山欽司)

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